終わりは始まり。ルドルフとエリザベートの2年間

2015年の帝国劇場公演から、2016年の帝国劇場、博多座、そして中日劇場公演の幕も無事おりましたね。「今」京本君が向き合っているお仕事を応援していたいので、「あの時は良かった」って回顧するのは程ほどにしないとなと思ってます。だからこそ、エリザベートはきっと何度も「あの時は」って言いたくなると思いつつ、この長い長い記事を書くことで、自分の中でも一区切りをつけないとなっと。

 

区切りという意味でも、京本くんのカテコの言葉は印象的でした。帝国劇場では、やはり「忘れないで」が今彼が発言できる限界だったのかなとも思いますし、中日劇場では、「運命」「これからも地道に努力」という彼らしい言葉を聴くことが出来ました。

 

日劇場「~ルドルフという役のオーディションが、僕の二十歳の誕生日の日でした。~今年もまた引き続きルドルフをやらせて頂いたということを、凄い運命に感じていて、本当に幸せに思っております。エリザベートに出演てミュージカルに興味を持つようになり、凄く楽しいんだと実感しましたので、またいつかこうしたチャンスを頂けるように、これから少しずつ地道に努力していきたいと思いますので、応援の程宜しくお願い致します。

 

帝国劇場「エリザベートと出会えて世界が一気に広がって、僕の人生の分岐点ともいえるほど素晴らしい作品です。今年もこうしてみなさんと出演することができて光栄に思っています。今年は僕のルドルフはみなさんの心に残るルドルフ、をテーマにしていました。まだこれから博多座、中日劇場と出演させて頂きますが、最後までみなさんの心にのこるルドルフを演じたいと思いますので、僕のルドルフを忘れないでください。」

 

 

1023日の大楽を観劇し東京に向かう新幹線の中で京本くんのファンの友人と、

「きっと何年経っても『あのときのルドルフの2年間は濃かったね、ファンとしても大きな意味のある時間とお仕事だったね。』ってこの後どんなお仕事があっても振りかえって懐かしくなるよね。」

なんて話をしたのを思い出します。今までやこの2年の他をお仕事を否定してるのではなく、後述しますがこの作品は彼の言葉を借りるなら「人生の分岐点」にもなったと思える作品でしたから。

 

2015年、帝劇公演、博多座公演、夫々のタイミングで書留てきたので、まずは名古屋での公演のお話を。

名古屋は今回初日、2週目、3週目と8公演程観劇しました。やはり1ヶ月半あいてのルドルフを演じる初日は目にしたかったので。

後述しますが、どんな舞台より(スーベニアもそこそこでしたが)本人が演じるその瞬間まで恐ろしいほどに観る側としても緊張してしまうのがこのエリザベート

初日は勝手にブランクに対して不安を感じていました。けれどそんな心配をよそに、帝劇・博多座よりも確実にパワーアップして戻ってきた京本ルドルフでした。

「おはようございます」このたった一言で、「あっかわった。これはいける。」ってはっきり思えるほどの。終わった瞬間、観劇していた友人達で、「すごかった!!」と口を揃えて興奮したのを思い出します。

回りもみんなそれなりに観ている友人ばかりでしたけれど、それでも皆ここまできて良かった。。って思うだけのものを初日から見せてくれるとは恐ろしい殿下です。

 

2週目の3公演。

土曜日のマチソワでは正直少し闇広でのパワー不足が感じられて、初日のあの圧倒的な力強さではない?という印象でした。しかし、その後の独立運動、ママ鏡でその不調を引きづることが一切無く、

しっかりと歌い上げていたので、ここが京本くんの2年目の強さだなと感じています。どんなコンディションでも一定レベルのものを見せられる、自分をコントロールできるようになってきたかな、というのはこの長丁場の舞台経験から得られてきているものだと思います。

そんななか日曜日。芳雄さんと涼風さんの千秋楽公演。とにかく全キャストの熱が1幕から恐ろしく、花様の「私だけに」で完全にシシィが憑依したようなふっと笑う表情、魂から歌うような声に、拍手がなりやまないショーストップの芳雄さんの最後のダンス。ソンハさんの存在感に万里生さんの年齢の変化をしっかり感じさえる演技に歌声、、、この熱に京本くんもぜひのって欲しいと思いながら2幕が始まるりました。「私が踊るとき」の花様と芳雄さんの勝負がもう圧巻でこの歌声の響きの中で死にたいと思うほどです。

 

いよいよルドルフの登場。昨日とは見違えるような大我ルドルフ。やはりカンパニーの熱が彼を一層奮い立ててるな、と思う暇も無く芳雄さんとのラストの闇広。観ているこちらまで同じタイミングで息継ぎする感覚で見ていました。もう全身震わせて芳雄さんに必死に食らい付くように歌う、全身を震わせて。終わった後これまたショーストップ気味の拍手のなか、芳雄さんは京本君の手をそっと握ってくれていました。ルドルフ役が決まったとき、初めて私が見た「闇が広がる」は芳雄さんの映像で、これを歌うのか、しかもこの方と。。と鳥肌がたった記憶がありました。それがラストの公演、必死に芳雄さんに食らい付いて歌う姿が印象的です。またぜひ、芳雄さんと共演できる機会が来て欲しいな、、と心のそこから思います。芳雄さんは2015年のMVPに大我くんを選んでくれたり、「かわいい」と度々口にしてくれたり、、。

続いて、独立運動での革命家とのダンス。顔も握りこぶしもわなわなと震えながらきれっきれで踊る。そして名乗りだす部分の息使い。そこからのママ鏡。もう京本くんのママ鏡が本当に名古屋にきてから一層感情の乗せ方が強くなって、それでいて声も太く響かせているからすごく切なくて。自分が子供を産んだ事のある母であったら、もっともっと胸が詰まる思い出みるのだろうなと思いましたが、とにかくこのシーンの誰からも見捨てられたルドルフの姿が涙を誘います。やはり花様のときは、すっと離された左手をじっとみつめ、そして博多でみたようにぎゅっと握り締めるんですよね。

 

そしてラストのマイヤーリンク。初日はカハっと笑うことが無くなり「目を閉じ覚悟する」だったのですが、土曜日に見たときは「安堵の笑み→覚悟」に変っていて、その変化がとても良かった。

京本くんの演じているルドルフ像として一貫しているように感じています。ラストキスも長かった。今までで一番長かったんじゃない?というような。

銃声が鳴り響いてやっとわれに返れた気がします。

 

カーテンコールで、芳雄さんのことをキラキラとした目で見つめる姿も印象的でした。ずっとにこやかに観ていたけれど、芳雄さんが「声が出ないな~なんて日も舞台にたって、、」というような言及があったとき、きゅっと真面目な顔になった姿も記憶にのこっています。

 

3週目。

ラスト4公演を観劇しました。とても長くなってしまいそうなので、大千秋楽のことを。

今回2年間通して、40回程度見たのかなと思うのですが、その2年間で私の中では「ベストなルドルフ」でした。父と息子で舞台にルドルフとして立った瞬間の精悍な表情。あんなに凛々しい姿は今まで見たことなかったです。歌詞のひとつひとつが力強くてルドルフの怒りがひしひしと伝わるようでした。

「闇が広がる」が始まる前、今までで一番力強く握りこぶしを振り下ろして地面を叩きつける姿、そこから完全に操られたように目から生気が失われる。そして歌声は今彼ができる最大限の歌で、さらに「縛られて」の「れて」で音程を変えるアレンジを加えました。「我慢できない」はどの回よりも力強く広がっていたし、とにかく本当にこれが2年の集大成なんだと感じました。

独立運動で革命家と踊るシーンでは、この3週目から、階段を下りるときは不安げな表情なのに、すっと目を閉じて見開いて、そこから決意の光が目の奥に宿る変化がありました。ママ鏡になると、途中から声を一瞬つつまらせながら必死にシシィにすがる様子に加え、ここでもアレンジを加えようと挑戦していたんですよね。心なしか声にも泣声交じりになり、ぎゅっと力強く花シシィにすがりつくからか、花様のお声も震えてるように感じて、、。最後の最後まで、京本くんは新しいことに挑戦し続けてました。ちなみに、前楽の蘭乃さんのシシィのとき、シシィに見放された瞬間、はいつくばってシシィを倒れこみながら追いかけたんです。彼の中からおもわずルドルフがそうせずにはいられなかったかのように。本当に京本君は憑依してお芝居する子だなとはっとさせられながらも思い知らされました。

マイヤーリンクでは汗をびっしょりかきながら、最後も安らかに微笑み、そして最後に目に光を宿してトートをにらみ、死んでゆきました。最後は顔に血の気は一切なく、人形のように、ふわっと倒れ、まるで母親に抱きかかえられる赤ん坊のように。この死に姿がなによりも彼のルドルフの一貫したお芝居を印象付けるものだなと思います。

 

きっとそれぞれファンの中で、このときのルドルフが一番!ってあると思います。舞台ってそのとき自分が感じたものが正解だとおもうので、私はこの日のルドルフが一番よかったと感じたとはっきり書きとめようと思いました。

 

 

 

いきなり東宝ミュージカルの中でも大きな作品のエリザベート、しかも若手の登竜門と呼ばれるルドルフ役に、ほぼ素人状態で飛び込んだ2015年。そして2年目の2016年の再演。本人の口から伝えられた意識の変化も個人的にはとても嬉しく、重みがあるものでした。

『人生の分岐点。世界が変った。』

 

すでに連載は終わってしまいましたが、シアターガイドの連載はどんなアイドル誌よりも内容が詰まっていました。

連載最終回で、「10年先まで自分の糧となる経験」「今の自分の1/4はミュージカルが占めている、~やりがいも大きいので、声に深みや渋みがでる年齢まで続けたい」と言及していたり、上述したように帝劇の千秋楽でのコメントだったり。このような言葉を応援している人から聞けたらどれほど嬉しいことか。

あくまでも私的な応援のスタンスですけれど、来年、再来年こうなって欲しいとか、こんな活動を誰々として欲しいとかよりも、「これは自分が10年先まで芸能生活をするために強みにできる」というその人なりのものを見つけて、それに納得して、最終的いろんな道を模索しながら夢を叶えて欲しいと思っています。その何かのひとつにミュージカルがあって、それはエリザベートに出会ったからこそで、2年間全うするなかで本人もそれを徐々に自覚してゆくようで、だからこそ特別に感じています。

脱線しますけど、今の京本くんなら、世の中で「2世」という看板でまず名前が知られてゆくことも全然良いと思ってます。勿論学生の頃の彼の悩みだとか、決して良いイメージばかりではないとか言い出したらきりが無いですけど、本人の意識が変ったことがまず1番にあって、そして彼の背負う運命は変えられないのだから、それをも武器としてどんどん使えばいい、そう思います^^

 

 

キャストに決まってから1年目のこと。

エリザベートの出演が決まって、ガムシャラ公演で本人の口から「エリザベートのオーディションに合格しましたー!」という報告がきけて、喜ぶのも束の間、稽古が始まり、インタビュー記事が出て。

どんな舞台なんだろうと調べてゆくうちに、事の重大さに気付きました。

 

総じて2015年もとても充実した記憶で満ち足りていますが、やはり休演した日、その後数週間は不安ばかり募らせてました。休演したその日の公演は私も観劇していましし、毎日今日は舞台に立てるのかと心配になり、(過去の記事にも書いた記憶が)演技が終わるたびに今日も無事終わった。とほっとするの繰り返しでした。

78月と調子を上げて千秋楽を迎え、やっとここまできたねという思い出カーテンコールを見届けたのを覚えています。

 

その後の雑誌でも当時は相当きつくてご飯ものどを通らなかったり、家族にも助けられていたりと明かされるたびに、やはりこの役と向き合うことの精神的な負担の大きさを感じました。

もちろん休演してしまったことは決してほめられることではないのですし、本人も一生後悔すると語った記事もありますし、今年になって、この経験を通じて自分自身のコントロールの術を身につけられるようになったのかなと思います。これは休演前のインタビューで

 

「演出の先生から、『~2世だしアイドルということで、評価のハードルは高いですよ。一生懸命頑張ることは誰でもやることだし、それだけじゃ周りに追いつけませんよ』という言葉を頂いた。~本番を迎えた今、その言葉が深いところまで届いてきてるよ。でもすべてを吸収しつつ、死に物狂いで頑張ったらすごい武器になる・・そう考えてステージに立つようにしてるんだ」

と話していたことは2年目の今でも思い出すときがあります。小池先生の下、精神的にも強く逞しくなれたのではないでしょうか。

 

とにかく必死になって挑んだ1年だけでなく、もう一度ルドルフと向き合うことが決まったとき、嬉しさの一方で、果たして地方まで回って大丈夫だろうか、、と余計な心配をして、さらに間を埋め尽くすようにジャニワにスーベニアに歌舞伎にクリエにサマステに少年たちに(笑)、と決まってゆく過程で心配するなといわれるほうが無理だろうという。しかもただ忙しいというより、それぞれまったく違う舞台であり、立場であり、メインどころも多いし本番と稽古をつねに繰り返してるし、、と。けれど実際はその忙しさも、ひとつひとつの活動も糧にして乗り越えたのだな~と名古屋のエリザベートで最高潮にもっていった彼をみていた思いました。繰り返しになりますが、その当時のことをシアターガイドで彼の口から何を思って、何に悩んでいたかをファンは読むことが出来たんですよね。いやぁ、本当に感謝しています。忙しいことは可哀想なんて思わないですし、むしろ「この2016年を乗り越えて、さらに素晴らしいものをみせられたら、絶対にまた1段、2段飛躍できる」と思いながらそれぞれの公演に脚を運びました。2016年の記事では、「はじめて舞台で生きている気がした」とも語っていて、ルドルフを演じた経験が一生のものになっているなと感じるたびに嬉しくなりました。自ら「大人になったルドルフ」を目指すといっていたように、演技をみて、以前より芯がでてしっかりした部分もありつつ、京本ルドルフ特有の儚さも残している!と伝わりました。

 

エリザベートという作品そのものとキャストの方々に惹き込まれ、まだまだ新参者ですがミュージカルの魅力にはまっていきました。

特に2年目の今年は、京本くん自信の何も心配の要らない安定した姿があったからこそ、他の俳優さんを楽しむ余裕ができたからこそかもしれません。

その中でも、今年は蘭乃さんのシシィと万里生さんのフランツが特に好んで選んでいました。

 

とくにシシィについて言えば、なぜだかとにかく蘭さんのシシィの演技プランや去年お歌のことだったりといろんなものが重なって胸を打ったんですよね。Wキャストだとついどちらが良い悪いのはなしになる世界なんだなと、わりとすぐに気付きましたが、どっちのほうがいいとかそういう話ではなく、2年目の彼女の演じているシシィがとても、私の中でシシィって共感できない女の人だな、エゴイストだなと感じていたシシィのイメージに合致したからなのかもしれません。

あくまでも個人的に感じ取っていた蘭さんのシシィですけれど、「人間臭い」シシィで気が強くて、とにかく自分の感情にまっすぐで、それをダイレクトにぶつける。フランツにもゾフィーにも。「私だけに」の歌はどこか怖いと思わせるような皇室にはいない女だったなぁと。

俳優さん個人的なバックグラウンドを考えなら役を見ることが良いか悪いかわかりませんが、「舞台に立ち続けること」やお客さんの目が怖くなったことも無くはなかっただろうに、その怖さと戦いながらこうして演じているのか、、と思うとつい涙がでそうになっていました。

名古屋初日で観た蘭さんの表情に明らかに余裕と自信がみられるし、不安定な部分もわずかに残るものの、圧倒的に良くなっていたと思います。場数、経験はこんなにも人に自信を与えて実力に変るんだ、、ミュージカルの世界は常に生歌で勝負の世界だからこそ、だましはきかない、、けれどそこで戦って身につける強さは本物なんだなと感心しました。

 

最後に。

 

今まで様々な姿を見てきたけれど、エリザベートに出会って、ルドルフをみて。この世界で輝く姿が一番みたいと思うようになりました。

それは、何十回見に行っても、どこに見に行っても必ず「素晴らしかった」が更新されてゆく姿があったし、個の力で自分の実力を超えたところで戦って、くらいつきながら役を深めてゆくその姿が輝いて見えて。なによりも歌や演技の実力そのもので厳しい評価ももちろん受ける。けれど良いものを見せれば全うに評価してもらえる。今まで彼のことを知らなかった人に知ってもらえる。お馴染みの客層が大半をしめるのではない世界で「京本大我」として名前を売ることが出来る。この作品でファンとしても本人の周りに広がっている景色は変わってゆきました。それはずっとファンとして望んでいたことです。けれど2年間を通して、まだこれはひとつの始まりなだけで、まだまだ今スタートラインに立ったとも言えるのかな。この先たくさんの作品に出会い、壁にぶつかりながらもまた表現を見つけ出して、10年、20年先まで活躍して欲しいなと思います。

とはいえ、個人的にはどんどんミュージカルに出て欲しい気持ちがあふれ出て仕方がないですけど、京本くんが選ぶお仕事や道はどんなものでも必ず光に通じるものだと信じられるので、自分の思いは心の中に秘め、静かに彼の「今」を見守りたいと思います。きっとエリザロスみたいな感覚が京本くんのファンの中にもたくさんあると思うし、個人的にもあふれるほどに在るのですが、もう京本君は次を見ていると感じるので、それに我々ファンも付いていくのが応援なのかなと思います。「急成長期」をひた走る姿においていかれないように^^

 

2015612日~20161023日。

 

京本くん、ルドルフ役、本当にお疲れ様でした^^